今回は2026年1月1日付で改定される出前館の「個人配達業務等委託に関する規約」の内容について紹介していきます。
規約改定内容の解説から、規約改定における懸念点など、今の出前館事情を交えながら深堀りしていきます。
規約変更の詳細

ここでは2026年1月1日付で改定される「個人配達業務等委託に関する規約」について、改定対象となる各規約を補足説明を交えながら個別に紹介していきます。
振込手数料の負担者変更
ここで紹介する規約変更内容は規約の第3条(1)内で記載されている配達報酬の振込手数料の部分となります。
まず、出前館の配達報酬は毎月15日及び月末の2回が締め日となっており、この締め日から翌5営業日以内に各配達員が指定した口座に配達報酬を振り込む形となっています。
そして、これまでは配達報酬を振り込む口座が三井住友銀行以外の口座である場合は振込手数料(1回220円)を配達員側が負担する形となっていました。
このため、三井住友銀行以外の口座を登録している場合は、報酬振込が発生するために配達報酬から220円差し引かれていました。
しかし、2026年1月1日以降は規約改定により 三井住友銀行以外の金融機関への振込についても、出前館側が振込手数料を負担することとなります。
これによって、配達員はどの金融機関の口座を使用していても配達報酬の振込手数料は無料となり、三井住友銀行以外の口座でも配達報酬全額を受け取れるようになります。
出前館稼働を定期的にしている人であれば年間で5,280円(1回220円×年間24回)分の負担が減ることになり、三井住友銀行以外の口座を登録していた配達員にとっては朗報となります。
従来の振込手数料がネックで、出前館ではちょろっと稼働するのは勿体ないと思って稼働を躊躇していた人も、2026年1月1日以降は気軽に稼働できるのではないでしょうか。
上記の規約改定は出前館の粋な計らいというわけではなく、単純に2026年1月1日から施行される中小受託取引適正化法(取適法)【旧:下請法】によるものです。
2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法により、振込手数料は、下請事業者(配達員)との合意の有無にかかわらず、発注事業者(出前館)がすべて負担することが義務付けられます。
また、下請代金(配達報酬)から振込手数料を差し引くことは「減額」に該当し、違法行為となります。
このことから出前館が配達員のことを思いやっての規約変更ではなく、法律に従うために仕方なく規約変更を実施したということになります。
報酬振込日を指定している他社(UberEats・Wolt)では、とうの昔から振込手数料は企業側が負担していたわけで、法改正で重い腰を上げた出前館は対応が遅すぎたとも言えます。
誤配
2026年1月1日付で誤配に関する以下の内容が規約に追記されます。
(追記箇所は青文字にしています)
- 第12条(11)(即時 アカウント停止・解除に該当する行為)
受託者の責に起因する遅配・誤配・置き配不備等の配達業務等の不履行又は不完全履行が認められる場合 - 別紙第4条(3) (配達員の注文代金相当額負担に該当する行為)
当社が指定した時間までに店舗から配達対象商品を受け取ることができなかったこと、当社又は注文者の指定する場所と異なる場所に配達対象商品を配達したこと等により、別途注文者が指定する時間までに配達対象商品を届けることができなかった場合。 - 別紙第6条(5) (配達員としての適切な行動について)
受託者は、配達業務等の履行にあたって配達先の住所、建物名、部屋番号等を十分に確認し、誤配の防止に努めなければならない。
なお、受託者の責に帰すべき事由により当社又は注文者の指定する場所と異なる場所に配達対象商品を配達した場合は、配達業務等の完了とは認めない。
上記の追記された規約部分は誤配防止を促す内容となっています。
これまでも誤配に対しての処罰はあったと記憶していますが、規約に記述したことで今後 誤配に対するペナルティがより強くなる可能性があります。
個人的には今までこれが記載されていなかったことが驚きで、何故今になって規約に追加?と思っています。
むしろ、かつての 日本語もろくに分からない違法フル電動自転車外人(以後 違法外人)が萬栄していた時に記述しておくべき内容であり、こうした違法外人が減少した今では あまり効果のない規約とも言えます。
そんな今更感がある規約変更ではありますが、タイミング的に嫌な予感もしています…
その嫌な予感については後述する『濡れ衣を着させられる?』にて言及していきます。
配達車両の衛生管理
2026年1月1日付で配達車両の衛生管理に関する以下の内容が規約に追記されます。
(追記箇所は青文字にしています)
受託者は、配達業務等に使用する車両等がある場合、当該車両等を清潔で衛生的な状態に維持し、安全な運用を行わなければならない。
また、配達業務等の履行過程においては、動物を当該車両に同乗させる等の行為をしてはならないものとするが、配達業務等の履行のために必要不可欠であって、かつ、衛生上及び安全上の問題がないと当社が認める場合は、この限りではない。
上記内容が別紙第6条(4)として新たに追加される形となります。
フードデリバリーは主に食品を取り扱うことから当然と言えば当然の内容なんですが、今になって何故これを追加したのかが疑問ではあります。
もしかすると、少し前にペットを同乗させている配達員がいたという話題が 一瞬だけあった気もするので、それの影響でしょうか。
衛星管理と言えば、2023年9月に起きた寿司事件を思い出すわけですが、本件はもう2年前の事象でもあるので、これが原因で規約が追加されたということではなさそうです。
※寿司事件の詳細については以下の記事にて解説しているの、興味がある方はこちらをご参照ください。
規約変更の懸念点

ここでは今回紹介した規約変更により、配達員へ及ぼす可能性がある心配事・不安要素について紹介していきます。
配達報酬の減少?
これは『振込手数料の負担者変更』に関連する懸念点となるわけですが、、配達員界隈では「振込手数料の負担者変更」によって配達報酬の減少が心配されています。
まず、どの銀行口座でも振込手数料が無料になることは喜ばしいことで、三井住友銀行以外の口座を使用している人にとっては嬉しい規約変更とも言えます。
そんな配達員にとっては嬉しい規約変更ですが、その一方で出前館は振込手数料の負担を強いられることになり、出前館としては この規約変更は好ましくないことでしょう。
そして、振込手数料の負担者が出前館側になることで、その損失分を配達員の配達報酬から補うのではないかという不安があります。
元々、配達報酬の金額については出前館の今後の課題でもあったでしょうし、規約変更に乗じて更に配達報酬を下げてくるというのは十分に考えられます。
最低報酬単価が400円未満になるといった大々的な変更は無いにしろ、2026年に入って微妙に報酬が下がったということはあり得ます。
ただ、いち配達員から言わせてもらうと、配達員にとっての出前館の魅了は他社よりも高めの配達報酬であって、それ以外には何の魅力もない酷い配達環境とも言えます。
そんな出前館が配達報酬を下げてUberEatsと同水準になろうものなら、他社でアカウント停止になったなどの特別な事情を抱えている配達員しか残らなくなるでしょう。
そうなれば配達員の質が悪い出前館と酷評され、客もどんどん減っていくという負のスパイラルに陥るのではないでしょうか。
そうした実情を今一度 出前館はしっかりと受け止めて、配達員への対応を検討すべきでしょう。
濡れ衣を着させられる?
これは『誤配』に関連する懸念点となるわけですが、今回のタイミングでの誤配に関する規約追加には不安を感じざるを得ません。
今回ので規約変更で追加された「誤配」関連の内容を簡潔に説明すると、配達員が誤配をした場合はアカウント停止・配達報酬の没収&注文者の利用料金の支払いの処罰を受ける可能性があるということです。
誤配をしたら確実に上記処罰を受けるわけではありませんが、規約に記載がある以上は上記処罰を受ける可能性も十分にあり得るということになります。
問題なのはこの規約が追加されたタイミングで、少し前(2025年10月頃)に報道された出前館の不正注文詐欺事件の影響を受けたのでは?とも思えます。
不正注文詐欺事件とは、商品を受け取ったにも関わらず「商品が届かない」という虚偽のクレームを計1095回を出して約374万円分の不正注文を繰り返した注文者が捕まった事件です。
※不正注文詐欺事件については以下の記事にて詳しく解説しているので、詳細を知りたい方はこちらをご参照ください。
上記事件のような規模は極めれ稀なケースですが、以前から虚偽クレーム自体は多数あったとされており、今なおタダ飯狙いの客は後を絶たないと言われています。
更に不正注文詐欺事件の報道の影響で、虚偽クレームを模倣する注文者が増え、偽りの誤配が多発したのではないでしょうか。
その結果、今回の規約変更で誤配に対する処罰を明確化したということであれば合点がいきます。
出前館は悪い意味で昔ながらの日本気質な企業であり、未だに「お客様は神様だ!」なんて思想を持ってそうで、虚偽クレームがあろうものなら真っ先に配達員を疑ってもおかしくありません。
流石に出前館も不正注文詐欺事件で顧客(注文者)も疑うようになったとは思うので、簡単に配達員を疑うということはないとは思います。
結局のところ、虚偽クレームに遭遇するかどうかは運次第なので配達員側ではどうすることもできません…
配達員として やるべきは、自ら誤配をしてしまわないよう これまで以上に細心の注意を払って配達することではないでしょうか。
とにかく、規約改定後に 言われもない誤配扱いを受ける配達員が一人も出ないことを祈るのみです。







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