今回は2025年7月に出前館から発表された決算予想の下方修正(最終赤字発表)について紹介していきます。
発表された予想決算内容から、赤字に下方修正してしまった理由、黒字化するためにすべきことなどについて解説していきます。
出前館 2025年8月期 決算速報

ここでは、今回出前館から発表された2025年8月期 通期の決算予想について解説していきます。
赤字に下方修正
出前館は2025年7月15日に、2025年8月期の連結業績予想を赤字に下方修正すると発表しました。
当初は100万円の黒字を見込んでいた従来予想から一転し、49億円の赤字予想となります。
オーダー数や流通取引総額が期初の想定を下回る見込みになったということで、通期での初の黒字化は実現できず最終赤字が7年連続となります。
尚、業績予想等の詳細データについては後述します。
予想決算業績
出前館は2024年10月の段階では2025年2025年8月期の連結決算を黒字と予想していましたが、今回の発表では一転し赤字予想となりました。
まずはその過去の予想と直近の予想の比較データを紹介していきます。
2025年8月 決算予想
発表時期 | 過去(予想 2024年10月) | 直近(2025年7月)予想 |
---|---|---|
売上高 | 530億 | 395億 |
営業益 | 100万 | -48億 |
経常益 | 1300万 | -36億 |
最終益 | 100万 | -49億 |
予想の売上高が約130億円減少したことにより営業益・経常益・最終益にも影響した模様で、当初の予想から大幅に売上高が下がってします。
続いては前述した直近予想を含めて、過去3年分の本決算+今年の本決算のデータを紹介していきます。
決算期 | 2022年8月 | 2023年8月 | 2024年8月 | 2025年8月(予想) |
---|---|---|---|---|
売上高 | 473億 | 514億 | 504億 | 395億 |
営業益 | -364億 | -123億 | -60億 | -48億 |
経常益 | -366億 | -121億 | -59億 | -36億 |
最終益 | -362億 | -122億 | -37億 | -49億 |
発表日 | 2022/10/14 | 2023/10/13 | 2024/10/11 | 2025/10予定 |
2024年の本決算では過去最高の最終益を叩き出しましたが、2025年の最終益は後退することが濃厚となりました。
2025年の予想売上高については当初は530億円と過去最高の売上高予想を出していたにも関わらず、結果的には過去最高どころか ここ数年では最低の結果となる模様です。
そもそも、2024年10月時点で発表された売上高530億という予想自体が絵空事とも思える数値であり、何の根拠があって その数値を出したのか謎ではあります。
そう考えると今回発表された売上高395億円というのは現実的な数値と言えるのではないでしょうか。
出前館 売上減少の理由とは

今回 出前館から発表された通期予想が赤字となった最大の要因は売上高が当初の予定よりも少なかったからではないでしょうか。
予想よりも下回っただけならまだしも、ここ数年で最低の結果となってしまっており由々しき事態とも言えます。
そこで、ここでは売上高が減少した理由を私の憶測を交えて紹介していきます。
フードデリバリー離れの加速
各社報道でも指摘されていましたが、物価高で節約志向が高まったことが 売上減の最大の要因なのではないでしょうか。
昨今の物価高で家計が圧迫される中で、割高イメージが強いフードデリバリーなんてもってのほかという人も多いかと。
実際のところ、割高イメージが強いというより本当に高いわけで、一部店舗は物価高の影響で更なる値上げとなり 今となっては一般市民には敷居が高い高級サービスになりつつあります。
そうなれば既存のフードデリバリーユーザーもサービス利用を控え、更に新規利用者もあまりの高さに敬遠してしまうのではないでしょうか。
そんな状況の中で、過去最高の売上高を上げるというのは夢物語にすぎず、出前館は今一度 昨今のフードデリバリー事情を踏まえた現実的な売上高を算出すべきかと。
キャンペーン・広告の減少
これは私の所感になりますが、ここ最近の出前館は目立ったキャンペーン・CMが少ないと思え、これが原因で売上高が伸び悩んだのではないでしょうか。
ただ、キャンペーン・CMを多用すればするほど それ相応の経費が発生するわけで、売り上げが上がったとて営業益の赤字が増えるというリスクもあります。
そもそも、過去に散々お金をかけてキャンペーン・CMを打ってきたことを考えると、今はもうそのフェーズでもない気もします。
出前館自身もキャンペーン・CMを多用するフェーズはすでに終わったという認識でしょうし、別の手段で売上を増やすことも想定済みだったかと。
ちなみに、売上高を上げるための別の手段が結局のところ不明なわけですが、無策で何となく530億円の売り上げが達成できると楽観視していたとも思えてしまいます。
度重なる不祥事
出前館は直近の1年間で数々の不祥事を起こしており、それらによって出前館のイメージが悪くなり それらが売り上げに影響したと思われます。
その数々の不祥事とは「システム障害」「異物購入騒動」「配達員アカウント不正利用」が挙げられます。
その中で売上高に直接的な影響を及ぼしたのが2024年10月に発生した長期間にわたるシステム障害ではないでしょうか。
システム障害は丸3日続いたわけですが、システム障害発生中は一切の注文ができなくなり売上もゼロということになります。
当初の予想売上高が年間530億円であったという前提を考慮すると、この売上高を達成するためには1日 約1.45億円の売上を出す必要がありました。
システムが丸3日間停止したということは単純に4.35億の機会損失となり、出前館への信頼も微弱ながら落ちたことを考えると4.35億以上の損失を出したと言えます。
その後も異物購入騒動・配達員アカウント不正利用の不祥事が発生し、これらによって出前館の評判が下がったことで売上に影響したのではないでしょうか。
尚、システム障害・異物購入騒動・配達員アカウント不正利用については以下の記事にて詳しく解説しているので、気になる方はこちらをご参照ください。
送料変動制の影響
出前館は2025年3月から注文時の状況(注文金額・配達距離・需給のバランス)によって送料が変更する 送料変動制という仕組みを導入しました。
配達員が多かったり天候が良い時などの注文が届きやすい状況では従来よりも送料が安くなる傾向にありますが、悪天候などになると送料が高くなる傾向となります。
問題なのは悪天候時の送料で、これがべらぼうに高くなるとのことです。
この話が本当であると仮定した場合、悪天候時の送料が増えることで1件の売上単価は上がります。
ただ、送料が高いことは利用者(注文者)にとっては望ましくないことであり、これをきっかけに出前館の利用を辞めた人もいるのではないでしょうか。
こうしたことを考慮すると送料の利益以上に客離れの損失の方が上回り、結果的に出前館の売り上げは減少した可能性が高いかと。
尚、送料変動制については以下の記事にて詳しく解説しているので、気になる方はこちらをご参照ください。
出前館が黒字化になるための対応策とは

ここでは、今後出前館が黒字化になるために私が考える対応策を紹介していきます。
サービスの向上
まず、出前館が率先してやるべきことはサービス向上つまり顧客満足度の向上ではないでしょうか。
その顧客満足度向上の具体的対策として、私が思う最もやるべき事項はダブル・マルチ配達の廃止です。
昨今の日本のフードデリバリーはどこもかしこも配達員に払う報酬を減らすために、顧客サービス度外視でダブル・トリプル配達を導入しています。
そうしたダブル・トリプル配達がフードデリバリー各社にとっての理想形な配達スタイルかもしれませんが、顧客(注文者)から見れば いい迷惑です。
そうした状況を逆手にとって、出前館は敢えてシングル配達のみに絞ることで他社との差別化ができ 顧客からの評価も向上するのではないでしょうか。
昨今UberEatsの顧客満足度 度外視のサービスによって、UberEatsに嫌気を差している注文者も多いでしょうから、注目を集めるための絶好の機会とも言えます。
かつては「アツアツをお届け!」を謳っていた出前館ですが、ダブル・マルチ導入のせいで今となっては「冷え冷えをお届け」の出前館となってしまっています。
今こそ、「アツアツをお届け!」を謳っていた頃の出前館に原点回帰する時ではないでしょうか。
配達システムの改善
出前館は今後黒字化するために 優先して考えていることは配達員への配達報酬を下げることだと思われますが、それは一番やってはいけない手段だと思っています。
というのも、出前館で配達している人は基本的に配達報酬が他社よりも高いから仕方なく やっているだけであって、配達報酬が他社と同額以下になれば 真っ当な配達員は離脱することが明白です。
報酬下がっても出前館で続けるのは、他社で問題を起こして配達できない素行が悪い配達員とアカウント不正利用の違法外人ぐらいなのではないかと。
そうなれば、出前館配達員の民度が一気に下がって、サービス低下し 注文者も出前館を敬遠することになりかねません。
そうしたことを踏まえて、出前館がやるべきは配達システムの改善・効率化だと私は思います。
正直な話 出前館の配達システムはまだまだ発展途上であり、UberEatsにはまったく及ばないとも言えます。
そんな不完全システムなくせに、ダブル・マルチなどUberEatsの猿真似をしているわけで、率先して改善すべきは不完全とも言える配達員マッチングシステムです。
まず、出前館は他社に比べて やたらと遠いピックアップ先の配達依頼が来る傾向があり、これが致命的とも言えます。
配達員の現在地からピックアップ先の距離を配達報酬に含めない仕様をいいことに、意図的にやたらめったら遠い配達員に配達依頼を送っているのか不明ですが、これが出前館自身の損失に繋がっていると思われます。
出前館は配達依頼を誰も受諾しないと徐々に配達報酬が上がっていく仕様であり、仮に遠くにいる配達員ばかりに配達依頼を送り続ければ 誰も受諾せずに自然と配達報酬が上がることになります。
こうした不完全なマッチングシステムのせいで出前館は自ら配達報酬を多めに支払うこととなっています。
配達報酬が上がることは配達員にとって喜ばしことですが、誰も受諾しなければ配達遅延に発展し 注文者側の満足度が下がる可能性があります。
最初から近場の配達員へ優先的に配達依頼を送るような仕組みにしておければ、注文者を待たせることなく配達員への報酬も削減できるわけで、優先的に改善すべきではないでしょうか。
正直なところ、配達報酬が下がってしまうことは残念ではありますが、現状の不完全な配達員マッチングシステムが改善されるのであれば多少の報酬減は致し方ないかと。
最後に
今回は出前館から発表された決算予想の下方修正(最終赤字発表)について紹介してきました。
色々と辛らつなことも言いましたが、今後も出前館がサービスを継続して欲しいがための叱咤激励であり、期待の裏返しでもあります。
現状、UberEatsが日本のフードデリバリーにおいてシェア ナンバーワンなわけですが、昨今のUberEatsのサービス品質は低下の一途をたどっています。
そんな今、出前館が飛躍するチャンスでもあり、今一度「アツアツをお届け」の原点に立ち返り 唯一無二のフードデリバリーサービスを確立してくれれば幸いです。
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